1989 年度実績報告書

神経系の発生に関与する細胞外マトリックス物質の研究

研究課題

研究課題/領域番号	01570033
研究機関	順天堂大学
研究代表者	西塚雅子順天堂大学, 医学部, 講師 (20133332)
キーワード	細胞外マトリックス / プロテオグリカン / 大脳皮質 / 発生 / コンドロイチン硫酸 / コア蛋白
研究概要	細胞外マトリックス物質が脳の発生過程において果す役割を解明する第一歩として、プロテオグリカンに着目し、脳に存在するプロテオグリカン分子を同定した。出生日、10、30日齢および成熟ラットの大脳皮質を中心とする大脳組織を蛋白分解酵素阻害剤存在下でホモゲナイズし、イオン交換や超遠心分離によりリン酸緩衝塩溶液に可溶性のプロテオグリカンを精製した。次いでこれをコンドイチナ-ゼで消化して、コンドロイチン硫酸プロテオグリカンのコア蛋白分子を調製し、ポリアクリルアミドゲル電気流動を行なった。出生時大脳に分布するコンドロイチン硫酸プロテオグリカンの主要なコア蛋白分子の大きさは220KDaで、その他に250Kの蛋白も認められた。10日齢の大脳においては220K分子は著しく減少し、150KDa分子が増加し、30日齢においては220K分子は検出されなかった。成熟した大脳における主要なコア蛋白は150KDaであり、130および93KDaの分子も30日齢以降増加した。これらの結果、大脳の発生に伴い細胞外マトリックスを構成するプロテオグリカンの分子組成が大きく変動することが判明した。大脳皮質中のコンドロイチン硫酸プロテオグリカンは生後著しく増加し、成熟脳における含量は出生時の約5倍に達する。更に、コンドロイチン硫酸プロテオグリカンのうち可溶性分子の割合は未熟脳において極めて大きく、成熟に伴って減少することが判明した。コンドロイチン硫酸プロテオグリカンと並んでもう一つのプロテオグリカンであるヘパラン硫酸プロテオグリカンは、大脳において含量はほぼ一定で発生に伴ってあまり変化せず、しかも殆んどすべてのヘパラン硫酸プロテオグリカンはリン酸緩衝塩溶液には不溶性であった。これらの結果は、大脳の発生過程において細胞外マトリックスのプロテオグリカンのうち、コンドロイチン硫酸プロテオグリカンが、ニュ-ロンやグリアの成長や移動などを調節する可能性を示唆している。

研究成果
(8件)

すべてその他

すべて文献書誌 (8件)

[文献書誌] Nishizuka,M.: "Intrinsic synapses in the ventromedial nucleus of the hypothalamus:an ultrastructural study" Journal of Comparative Neurology. 286. 260-268 (1989)
[文献書誌] Nishizuka,M.: "Medial preoptic islands in the rat brain:electron microscopic evidence for intrinsic synapses" Experimental Brain Research. 77. 295-301 (1989)
[文献書誌] Nishizuka,M.: "Ultrastructural characterization of prolactin-like immunoreactivity in rat medial basal hypothalamus" Neuroendocrinology. 51. 249-254 (1990)
[文献書誌] Nishizuka,M.: "Neuronal structure and male-female difference in the medial amygdala of rats" Biomedical Research. 10. 11-14 (1990)
[文献書誌] Nishizuka,M.: "Modification of nerve growth factor and sex steroids in development of hypothalamic neurons" Endocrinologie Experimentalis. 24. (1990)
[文献書誌] Ohta,H.: "Effect of nerve growth factor(NGF)on survival of superior cervical ganglion(SCG)transplanted into the third ventricle in rats" Japanese Journal of Pharmacology. 51. (1990)
[文献書誌] Arai,Y.: "Problens of the Aged" The Gerontological Society of R.O.C., 213 (1989)
[文献書誌] 西塚雅子: "新生理学大系第7巻発生2分化の生理学" 医学書院, (1990)

1989 年度 実績報告書

神経系の発生に関与する細胞外マトリックス物質の研究

研究代表者

西塚 雅子 順天堂大学, 医学部, 講師 (20133332)

研究成果

[文献書誌] Nishizuka,M.: "Intrinsic synapses in the ventromedial nucleus of the hypothalamus:an ultrastructural study" Journal of Comparative Neurology. 286. 260-268 (1989)

[文献書誌] Nishizuka,M.: "Medial preoptic islands in the rat brain:electron microscopic evidence for intrinsic synapses" Experimental Brain Research. 77. 295-301 (1989)

[文献書誌] Nishizuka,M.: "Ultrastructural characterization of prolactin-like immunoreactivity in rat medial basal hypothalamus" Neuroendocrinology. 51. 249-254 (1990)

[文献書誌] Nishizuka,M.: "Neuronal structure and male-female difference in the medial amygdala of rats" Biomedical Research. 10. 11-14 (1990)

[文献書誌] Nishizuka,M.: "Modification of nerve growth factor and sex steroids in development of hypothalamic neurons" Endocrinologie Experimentalis. 24. (1990)

[文献書誌] Ohta,H.: "Effect of nerve growth factor(NGF)on survival of superior cervical ganglion(SCG)transplanted into the third ventricle in rats" Japanese Journal of Pharmacology. 51. (1990)

[文献書誌] Arai,Y.: "Problens of the Aged" The Gerontological Society of R.O.C., 213 (1989)

[文献書誌] 西塚雅子: "新生理学大系 第7巻 発生2分化の生理学" 医学書院, (1990)

1989 年度実績報告書

西塚雅子順天堂大学, 医学部, 講師 (20133332)

[文献書誌] 西塚雅子: "新生理学大系第7巻発生2分化の生理学" 医学書院, (1990)