細胞外マトリックス物質であるプロテオグリカンが神経系に存在し、神経系の発生において特異的に発現される可能性を、グリコサミノグリカンの動態から明らかにしようとした。プロテオグリカンを特徴づける特殊な糖鎖であるグリコサミノグリカン鎖を大脳組織から分離し、ラットの大脳発生に伴うグリコサミノグリカンの消長を解析した。ラットの大脳におけるプロテオグリカンの主要なグリコサミノグリカンはコンドロイチン硫酸であった。出生時に大脳のコンドロイチン硫酸はほとんどが可溶性が、その後可溶性コンドロイチン硫酸の割合は減少したが、成熟後においても可溶性成分が全量の50%以上を占めており、これらのことは、可溶性コンドロイチン硫酸が、プロテオグリカンの主要な糖鎖であることを示していた。これに対し、ヘパラン硫酸量は少なく、大脳形成に伴う大きな変化は認められなかった。ヘパラン硫酸はほとんどが不溶性分画に検出された。これら2種のグリコサミノグリカンとは異なりプロテオグリカンコアに結合しないグリコサミノグリカンであるヒアルロン酸は出生直後大脳に大量に分布し、その後著しく減少した。昨年度本研究において、大脳の発生に伴い、出現する可溶性プロテオグリカンのコア蛋白が変化することを明らかにした。本年と大脳の発生に伴いプロテオリグリカンのグリコサミノカン鎖の組成と性質が変化することを示した結果、大脳の組織形成において、プロテオグリカンのコア蛋白とグリコサミノグリカン鎖の両者が機能物質として作用する可能性が示唆された。昨年検出した分子量の異なる6種のコア蛋白のそれぞれにグリコサミノグリカン鎖、特にコンドロイチン硫酸鎖がいくつ結合してプロテオグリカン分子を構成しているのかは、今後の研究課題である。
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