研究概要 |
細胞膜のイオンチャネルの活動が,免疫系細胞の情報伝達や機能発現に,重要な役割を担っている事が分ってきた。本研究では血液細胞のうち特に好中球,好塩基球,好酸球の3種類の顆粒白血球をモデルに選び,近年開発されたパッチクランプ法を適用して以下の結果を得た。 1.イモリの各顆粒白血球は直径を大きく(20〜24μm),同定が容易である。生きた状態で,好中球には分葉核が,好塩基球には多数の顆粒が好酸球には二分核と輝く顆粒が認められる。 2.Wholeーcellの細胞内記録を行ったところ,好中球の静止膜電位は,ー60〜ー80mVであった。好中球に強い過分極を与えると内向き整流性K^+電流が誘発される。このK^+電流は外液に1mMの、Cs^+やBa^<2+>を加えると抑制された。 3.K^+電流を生じる際の膜コンダクタンスは外液のK^+濃度の平方根に比例する。また,コンダクタンスの活性化は,K^+の電気化学ポテンシャル勾配の値に依存する。 4.好中球に向け,雑菌培養の上清を与えると,細胞は変形し遊走を始める。この時,膜電位は+20mVにまで脱分極する。A23187(10μM)を投与しても,これらの現象が生じた。 以上の事から次の事実が判明した。すなわち,好中球は膜電位が深く,K^+の平衡電位付近にあるが,化学刺激を受けると細胞内Ca^<2+>濃度が高まり,脱分極と細胞の変形,遊走が生じる。好塩基球や好酸球にはこのような応答性はなく,単に受動的な電流一電圧応答を示した。 膜電位依存性チャネルが,広く白血球細胞にも存在する事がわかったため,別の非興奮性組織とみなされている内分泌系細胞について,それらにおけるイオンチャネルの存在の可能性と意義を比較検討した。
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