研究概要 |
1.前年度の研究から低酸素時の血圧低下が呼吸抑制を増強することが明らかになったので,低酸素による血圧低下の機序,心拍出量の変化などを調べた。実験は全てハロタン麻酔ラットを用いた。呼吸抑制の出現に先行して腎交感神経活動の減少,心拍数と血圧の低下が認められた。両側迷走神経切断後では交感神経活動は低酸素時に増加し、血圧の低下も軽度であった。従って低酸素時の交感神経活動変化と血圧変化は、肺迷走神経求心性活動に依存すると判断された。迷走神経存在下には低酸素による交感神経活動の減少と低酸素による直接的な血管拡張が加算され著しい血圧をもたらす。これが呼吸抑制の発生を増強すると結論できた。空気呼吸時には酸素消費量は心拍出量または酸素運搬量に影響されずにほゞ一定である。しかし低酸素時は心拍出量,酸素運搬量,酸素消費量とも減少する。しかも酸素消費量は心拍出量または酸素運搬量の減少に直接的に比例して減少した。すなわち低酸素時には酸素運搬量が減少することによって酸素消費を低下させると考えられた。 2.低酸素時には呼吸抑制と共に酸素運搬量減少による酸素消費量の低下が認められた。低酸素時に換気血を増加させ低酸素血症を改善することが可能ならば好気的代謝の維持は可能と考えられる。しかし低酸素が著しい場合にはこの可能性は少なくなる。従って酸素消費量を減少させるほうが生体にとって有利である。強い低酸素時の酸素消費量の減少と呼吸抑制は低酸素に対処する生体反応の一つと見ることができる。
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