研究概要 |
本年は二年継続の初年度にあたり,腎尿細管細胞のイオンチャネルをパッチクランプ法で研究する為の基礎的研究を行なった。その結果以下の事実が明らかとなり,次年度への発展の足がかりとなった。(1)多細胞集合体である腎尿細管をトリプシン等の酵素処理により単一細胞化することは、細胞個々のイオンチャネル解析に必要不可欠であるが,この操作は細胞膜構造蛋白(イオンチャネル)の脱落を伴った(細胞内負電位の低下(脱分極))。(2)酵素処理により損傷を受けた細胞を10%血清を含む培養液でincubationすると,細胞膜蛋白は修復された(細胞内負電位の回復)。しかし,細胞膜イオンチャネルは,血清内に含まれる種々の生理活性因子・増殖因子等により活性化しており,Oscilloscope上でのGiga-seal判定が困難であった。従ってトリプシンで単離した細胞を一昼夜血清を含む培養液でincubationした後,血清を含まない培養液で数時間incubationすれば,ほぼ健常な細胞で再現性よく実験ができることがわかった。 1個の細胞におけるdouble-patching実現の為,パッチクランプ増幅器(日本光電,CEZ2200)を購入した。二本のパッチ電極を同一細胞に乗せる為,現在やや大型の細胞(線維芽細胞,L cells)においてトレ-ニング中である。 G蛋白を介するイオンチャネルの活性化機構を研究する為,培養近位尿細管細胞において,GTPγS注入実験を開始した。この結果,Non-selective cationチャネルが,GTPγSにより活性化されることがわかった。このチャネルが細胞内Ca増加に重要な役割を演ずるか否かを明らかにする為,細胞内・外のイオン置換,Caチャネル阻害剤を用いた実験が必要である。
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