研究概要 |
本研究の目的は,申請者が開発中の画像-電気信号同時計測システムを用いて,今まで不可能であったStretch Activated Channel(伸張感受性イオンチャネル)の定量的刺激(膜張力)-応答(チャネル活動度)関係を解析することである。本年度は同時計測システムがほぼ完成し,世界で始めてSAチャネルの定量的な刺激-応答特性を得ることができた。 (1)ビデオマイクロスコピィ:市販の倒立顕微鏡の光学系を改造し,微分干渉光学系(DIC)のもとでビデオを組み合わせることにより,14インチテレビモニタ-上で最終倍率数万倍の鮮明なパッチ膜画像を得ることができた。 (2)圧力による膜曲率の変化:ピペット内圧を変化させると,パッチ膜の曲率が大きく変化することが判明し,従来仮定されていた膜曲率一定の概念が誤りであることが分かった。 (3)パッチ膜張力の測定:画像から求めた膜曲率とピペト内圧の値からLaplaceの法則により始めてパッチ膜にかかる張力が決められた。膜張力の感度は約3.3dyn/e-fold(圧力)であり,膜の粘性係数は約50dyn/cmと推定された。 (4)SAチャネルの刺激-応答特性:従来は膜張力が測定できなかったために,SAチャネルを活性化する刺激が圧力なのか,張力なのかがわからなかった。今回,様々なサイズのパッチ膜において,SAチャネルの活動度を,それぞれ圧力と張力に対しプロットした結果,前者から得られる感度はパッチ毎にばらつくのに対して,後者のプロットは,パッチ膜によらず一定の値を示すことがわかり,SAチャネルが圧力ではなく,膜張力により活性化されることが強く示唆された。
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