研究課題/領域番号 |
01570045
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
今井 清博 大阪大学, 医学部, 助教授 (50028528)
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研究分担者 |
石森 浩一郎 京都大学, 工学部, 助手 (20192487)
宮崎 源太郎 大阪大学, 基礎工学部, 教務職員 (50166146)
渡邊 学 大阪大学, 医学部, 助手 (30182950)
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キーワード | 人工変異体 / ヘモグトビン / 部位指定変異導入 / タンパク質工学 / アミノ酸置換 / 組換えDNA / アロステリック効果 |
研究概要 |
組換えDNAを用いた部位指定変異導入法によって、人工変異ヘモグロビンを合成し、それらの酸素結合機能、光吸収スペクトル、プロトン核磁気共鳴(NMR)スペクトル、共鳴ラマン散乱などを測定することによって、ヘモグロビンのアロステリック生理機能発現によって鍵となるアミノ酸残基の役割を実験的に検証した。 今年度は、β鎖ヘムに酸素が結合すると、そのサブユニット内の構造変化を引き起こす引金の役割を果たすと考えられているβ145TyrをPheに置換したHb Yβ145F、および、α1ーβ2界面にあって、T状態ではα94Aspと水素結合を形成するβ37TrpをPheに置換した、Hb Wβ37Fの2種類の変異体を合成した。グロビン遺伝子への変異導入、グロビン遺伝子の発現は、M13ファ-ジ・大腸菌の系を用いて行った。 Hb Yβ145Fの酸素親和性は正常ヘモグロビン(Hb A)に比べて3倍高く、共同効果の強さは中程度に減少した。紫外域吸収スペクトルはこの変異体のR→T転移が制限されていることを、共鳴ラマン散乱はヘム鉄と近位His残基のNεの結合の伸展度が減少していることを、また、NMRスペクトルのパタ-ンはHb Aに比べて大差はないことを、示した。従って、β145のアミノ酸残基は、いわゆるチロシンポケットにすっぽり収まるベンゼン環程度の大きさの側鎖を有することが重要であり、β145Tyrの水酸基とβ98Valの主鎖カルボニル基との間の水素結合はあまり重要ではないことを明らかとなった。 Hb Wβ37Fは著しい酸素親和性の上昇と協同効果の消失を示したが、構造上の異常は軽微であった。著しい機能異常は、低い蛋白濃度での2量体への解難のためかも知れない。β37Trpとα94Aspとの間の水素結合によるT状態安定化への貢献度はあまり大きくないと考えられる。
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