研究概要 |
電子伝達フラビン蛋白(Electron transfer flaooprotein,ETF)は2つのサブユニットと1つのFADとから成るフラビン蛋白である。豚腎ETFのアポ蛋白(apoETF)とFADとの結合過程を速度論的・平衡論的に解析した。 光散乱の測定により,apoETFの分子量が広い濃度範囲にわたって一定で,かつholoETFの分子量と同一であったことから,FADのアポ蛋白への結合に伴い,サブユニットへの分離など,蛋白分子の解離会合が起こっていないことが確認された。 ApoETF濃度がFAD濃度に対して大過剰のとき,結合反応は一相性で擬一次反応であった。しかしFADが大過剰のときは,二相性の反応曲線が得られた。このうち速い相は擬一次反応であったが,遅い相の速度はFAD濃度によらずほぼ一定であった。これらの実験結果からapoETFが異なる二つの形態の間の平衡で存在しており,この一方がFADと結合するというモデルがたてられる。反応式は 【numerical formula】 ここでA^*とAがapoETFの2種の形態を示す。各速度定数は,50mMリン酸緩衝液,pH7.6,0.3mMEDTA,5%グリセロ-ル,7℃の条件下で,k_<+1>=3.9×10^4 M^<-1>s^<-1>,k_<-1>〜10^<-5>s^<-1>,k_<+2>=1.0×10^<-3>s^<-1>,k_<-2>=3.1×10^<-3>s^<-1>と求まった。 また,分子量が等しいにもかかわらず,分子ふるいクロマトグラフィにおけるapoETFとholoETFの溶出パタ-ンは著しく異なるものであった。これより、蛋白の構造がFADの結合により大きく変化することが示唆された。
|