賢のO_2感知機構に関する研究ーエリスロポエチン(EPO)の生成に関連して

1991 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 01570048
• 研究機関: 奈良県立医科大学
• 研究代表者: 榎 泰義 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (00075029)
• 研究分担者: 清水 悟 奈良県立医科大学, 医学部, 助手 (20216089) ; 坂田 進 奈良県立医科大学, 医学部, 助手 (20142383)
• キーワード: ハイポキシア / エリスロポエチン / 近位曲尿細管 / 低圧 / 赤血球系コロニ-抑制因子 / Gentamicin / ラット / マウス

研究概要

1.ハイポキシア刺激による腎Epo生成と実験的腎障害との定量的関係:(1)低圧(0.35atm:P_<IO2>45.8torr)〜瀉血性貧血(Ht:正常の65%に低下)負荷により、ラット腎静脈血中のEpoは急速に上昇し、6h後にピ-クに達した後、徐々に低下した。ピ-ク時のEpo値は、低圧負荷ラットで2.9±1.1U/ml(負荷前値の4.14倍)、貧血負荷では4.3±1.2U/ml(負荷前値の6.14倍)であった。腎動一静脈血間で有意差はなかった。
(2)Gentamicin投与(33.8mg〜67.5mg/kg体重、14日間)により、1)でみられたハイポキシア負荷に対するEpo生成反応は、用量依存的に著しく阻害された。またこの場合、腎の近位曲尿細管部に限局して、用量依存的に組織傷害(溷濁腫脹〜細胞壊死)がみられた。Gentamicin投与による組織傷害度とEpo生成阻害度との間には直線的な相関がみられた。
(3)今回みられたEpo値の変動が“絶対的"変動であることを、Evans Blue法による血漿量の同時測定によって立証した。
2.赤血球系コロニ-形成刺激法によるEpo定量の信頼性について:われわれがEpo定量に常用している当該法については、Epo以外の同作用をもつ因子の影響を否定できない。rHuEpoに対するモノクロ-ナル抗体を用い、この点につき検討した。マウス血漿のコロニ-形成刺激活性の大半が抗体添加により中和されること、また同上抗体を用いたアフィニテイ・カラムにその活性の大半が特異的に吸着されることから、当該法は信頼するに足る測定法といえる。
3.貧血患者血漿における赤血球系コロニ-形成刺激活性と抑制活性の逆相関関係:腎機能が正常な貧血患者において、刺激活性(Epo値の対数)と抑制活性との間には、高い逆相関(r=-0.714)がみられた。

研究成果

• [文献書誌] Sakata,S.et al.: "Improved microbioassay for plasma erythropoietin based on CFUーE colony formation." Annals of Hematology. (1992)
• [文献書誌] Sakata,S.et al.: "Inverse relationship between erythroid colonyーstimulating and inhibiting activities in plasma from nonーuremic anemic patients." European Journal of Haematology. (1992)
• [文献書誌] Shimizu,S.et al.: "Erythropoietin response to hypobaric hypoxia is modified by an altered oxygen affinity of blood." Highーaltitude Medical Science(Ueda,G.,ed.),Shinshu Univ.Press. (1992)
• [文献書誌] Sakata,s.et al.: "Plasma erythropoietin in mice at simulated highーaltitude." Highーaltitude Medical Science(Ueda,G.,ed.),Shinshu Univ.Press. (1992)
• [文献書誌] Sakata,S.et al.: "Relationship between erythropoietin and erythroid colonyーstimulating activity in mouse plasma." European Journal of Haematology. (1992)
• [文献書誌] Motomiya,Y.et al.: "Erythropoietin activity in chronic dialysis patientsーacomparison of two methods." Journal of Japanese Society for Dialysis Therapy. 23. 273-278 (1990)