骨格筋の単一線維を、蛙の前脛骨筋より摘出し、細胞内Ca指示薬を細胞内に注入して、細胞内Ca濃度変化と収縮張力を同時記録することを計画した。細胞内Ca濃度変化の測定には、発光蛋白エクオリンと、蛍光Ca指示薬fura-2を用い、両者により得られるCa信号を比較し、両指示薬の定量性を検討した。fura-2の蛍光測定を行なうために、倒立顕微鏡に、蛍光測定装置をとりつけ、1KHzの速さで340および380nmの励起光を変換させ、励起光により発する510nmの蛍光を、光電子倍増管にて検出する実験装置を完成させた。fura-2を直径100μmおよび200μmの毛細管内に入れ、fura-2濃度とCaイオン濃度に感受性の無い360nmの蛍光強度との関係を求めた。100μm程度の毛細管では、360nmの蛍光強度はfura-2濃度と直線関係にあるが、200μmの毛細管ではこの関係が成立しない。fura-2濃度が高くなると蛍光強度が低下傾向を示し、これは、内部遮蔽効果によるものと考えられる。同様に、pCa3.0では、fura-2濃度を増加させることにより蛍光強度が低下することがわかった。この効果は、pCa7.7ではほとんど見られないことから、蛍光強度の低下は蛍光強度が強くなると、内部遮蔽効果により、おもに340nmの励起光の透過が悪くなるためと考えられた。骨格筋線維内にfura-2を注入した後、電気刺激をあたえ、単収縮および強縮発生時の細胞内Ca transientを測定し、Caイオン濃度に変換した。単収縮および強縮発生時には、細胞内Caイオン濃度はそれぞれ、およそ0.5μMと1μMになり、エクオリンで得られた値と大きな開きがあることが明らかになった。これは、おそらくCaイオン濃度が高くなると、蛍光が強くなり、340nmの励起光が内部遮蔽効果により減弱するためであると考え、解析している。
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