本年度は、昨年度得られた結果の裏付けをする実験を行い、結果をまとめ論文を書き投稿した。昨年度までの結果は、Furaー2により測定された細胞内Caイオン濃度は、エクオリンおよび他のCa indicatorで測定された値よりも、ずっと低いことが明らかになったので、その原因解明を主な目的なした。(1)筋の動きによるア-チファクトの影響を除くために、筋節長を2.4μmから3.6μmに伸ばして測定したが、強縮発生時の細胞内Ca濃度は2.4μmのときよりも低く、0.85μMであった。(2)内部遮蔽効果が、furaー2の濃度が高くなると顕著になり、高いCa濃度による蛍光が低く見積られてしまう可能性がある。筋線維し同じような直径のガラス毛細管のなかに、種々のCaイオン濃度の浴液をいれ、furaー2の濃度を変えて蛍光強度比を測定した。蛍光強度比は、Caイオン濃度が低いとき(pCa7)には、furaー2の影響を受けないが、Ca濃度が高くなるにつれfuraー2の濃度が濃くなると蛍光強度比が低下する傾向にあった。これは、濃いfuraー2を細胞内に注入すると、R_<max>が低下し、その結果、蛍光強度比が低くなることをある程度説明することができる。しかし、我々の用いたfuraー2濃度では内部遮蔽効果による蛍光強度比の低下は、約20%程度なので、furaー2により得られた低い細胞内Ca濃度を内部遮蔽効果で全て説明することは困難である。(3)furaー2は細胞内の可溶性蛋白と結合しそのK_D値も高くなることが知られている。そのために、キュベット内で得られたK_D値を使うことにより、細胞内Caイオン濃度を低く見積る可能性がある。Furaー2を使って細胞内Caイオン濃度を測定するときには、これらの要因が重なりあって、細胞内Caイオン濃度が低く測定されるものとの結論を得た。また、高濃度のfuraー2を細胞内に注入すると、エクオリンの信号と張力が低下しCa bufferとして働くことを確認した。
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