Caイオンに親和性の高いCa indicator、Furaー2と、エクオリンを、蛙骨格筋単一筋線維内に注入して、静止時および収縮後の細胞内Ca濃度を測定した。細胞内Ca濃度の定量には、両indicatorのキュベット内較正曲線を用いた。静止時のfuraー2蛍光信号強度比(励起光340および380nm)をCa濃度に変換すると、負の値を示した。単収縮時のfuraー2蛍光強度比から得られた細胞内Ca濃度は0.5μM、エクオリンの発光から得られた値は5μMであった。また、強縮時(50 Hz、1秒間)の細胞内Ca濃度は、furaー2で測定すると1.1μM、エクオリンで測定した場合には7μMであった。単収縮後、30秒たってもfuraー2の蛍光強度は静止レベルにはもどらなかった。刺激頻度を増すと、furaー2蛍光強度比の静止レベルが上昇し、刺激停止後、ゆっくりと刺激前のレベルに回復した。furaー2蛍光強度比のピ-クは刺激頻度の増加に伴って増高した。他方、エクオリンの光信号のピ-クは刺激頻度の増加にともない減少し、静止時の発光強度変化を測定することは困難であった。強縮後、静止時よりも高いfuraー2蛍光強度比が90秒以上持続した。エクオリンでは、刺激前より高い静止時の発光は、刺激後20ー30秒の間検出可能であった。これらの結果は、(1)furaー2で定量した細胞内Ca濃度は他のCa indicaている値よりもずっと低い、(2)furaー2は低い細胞内Ca濃度を定性的に検出するのに適している。(3)刺激により細胞内に放出されたCaイオンが、細胞内のCaイオン結合部位から解離し、再び筋小胞体に帰還するまでは、これまで考えられていた以上に長い時間かかる、ことを示唆している。Furaー2は、(1)細胞内で可溶性蛋白に結合する、(2)高い濃度のfuraー2を細胞内に適用すると、内部遮蔽効果により蛍光強度は減少する、(3)細胞自身が短波長の励起光(340nm)をより吸収するので、高いCa濃度が低く見積られるなど、Ca indicatorとしての欠点が明らかになった。
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