研究概要 |
Na,K-ATPase αsubunitはcatalytic subunitとして機能しているが、βsubunitはまだその機能について不明の点が多い。しかしながら最近、βsubunitの働きを示唆するいくつかの結果が報告され、Na,K-ATPaseの細胞膜への輸送及びその活性発現にβsubunitが重要な役割を果たしている可能性が示されている。 我々はNa,K-ATPaseのアセンブリと細胞膜への輸送におけるβsubunitの役割を詳細に明らかにする目的で、βsubunitのN末側半分をHeLa細胞において発現させ、新たに発現された蛋白質(βN)と宿主HeLa Na,K-ATPaseとのアセンブルの可否、またβNによって宿主のNa,K-ATPaseがどのような影響を受けるかを検討した。 ラット脳のβsubunit cDNAよりN末側半分をコ-ドするcDNA断片を切り出し、HeLa細胞にトランスフェクトし、βsubunitの断片蛋白質(βN)を発現しているHeLa細胞のクロ-ンを得た。このクロ-ンを用いて、宿主HeLa細胞のNa,K-ATPase α,βsubunitと新たに発現されたβNの生合成、アセンブリ、輸送を解析した。 その結果βNはα及びβsubunitとアセンブリ出来ず、また細胞膜にも輸送されないことが判った。βNの細胞内局在を調べたところERに局在していた。βNを発現している細胞と発現していない細胞間で宿主αとβのER上で行われるアセンブリの程度を比較すると、βNを発現している細胞ではコントロ-ルと比べてα,βのアセンブリが約半分程抑えられていた。βNは宿主Na,K-ATPaseと最終的に複合体を形成することは出来ないが、ERに局在し、αあるいはβと何等かの相互作用をして、そのアセンブリを阻害しているものと思われる。βNのα及びβに対する作用を解明することによって、α,βsubunitのアセンブリ機構の過程を明らかにすることが出来ると考える。
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