研究概要 |
ウサギ胎児と生後間もない幼若ウサギを用いた。4%パラホルムアルデヒド液にて固定した。臭粘膜の凍結前額断切片(10μm)を作製し、モノクロナル抗体2D5,4G12を用いて、間接蛍抗体法を行い観察した。 抗体2D5は、胎生14日目の嗅細胞を標識した。この時期、標識された嗅細胞は嗅上皮の上方に位置し、単層配列をしていた。軸索は脳に投射していたが、樹状突起の発達は遅れており、乳首のような形をしていた。胎生17日目になると、嗅細胞は上皮の中央に移動し、樹状突起は伸長し、形態的には成熟型と類似していた。胎生25日目になると、嗅細胞は多重配例し、上皮の厚さが著しく大きくなった。 抗体4G12は胎生17日目まで嗅細胞を標識せず、胎生18日目に4G12陽性の細胞が散発的に見られるようになった。その後、嗅細胞が多層配列を呈しても、4G12は上皮上方の細胞しか識別しなかった。 2D5に対する生後の染色パタ-ンでは、細胞の形態・配列や層の厚さは成熟型とほぼ同じであった。一方、4G12に対する染色パタ-ンは非常に特異であった。すなわち、生後1日目では、4G12陽性細胞は嗅上皮の上方にのみ見られたが、日が経つにしたがって、4G12陽性細胞の数が増加し、4G12陽性細胞は上皮上方から中程に広がり、約1ケ月経つと、深部を残して、4G12陽性細胞で占められた。このパタ-ンは成熟動物で見られた像と一致していた。したがって、4G12陽性細胞の出現パタ-ンは、「浅層一陽性、深層一陰性」であり、動物の成熟に伴って、「陽性」の細胞が占める嗅上皮の領域は浅層から深層へと広がって行き、嗅細胞の成熟度は上皮の深層から浅層へ向う縦軸にそって大きくなる。
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