研究概要 |
モノマロナル抗体2D5,4G12 をマ-カ-として、ウサギ嗅粘膜上皮の免疫組織化学的研究を行った。抗体2D5は、胎生14日目より成熟動物まで、すべての嗅細胞を標識した。抗体4G12は、成熟型の嗅細胞を選択的に標識した。嗅上皮の発生・分化を追求した結果、4G12陽性細胞は、胎生18日目に始めて出現し、その後、上皮の上方に位置し、日が経つにしたがって4G12陽性細胞数が増し、上皮の下方へ向って4G12陽性細胞が占める割合が増加した。 次に、成熟動物を用いて一側嗅球除去に伴う嗅上皮の染色パタ-ンの変化を観察した。 嗅球除去により、嗅上皮に核濃縮を示す細胞が多数見られ、嗅球除去後1週間経つと、嗅細胞数は顕著に減少し、層の厚さも小さくなった。2週間経つと、わずかであるが、細胞数と層の厚さが増した。その後、除々に増加し、6週間後には、健常側の9割位にまで改復した。しかし、この時期嗅細胞の成熟度は低く、生後間まない幼若動物のそれに類似していた。すなわち、4G12陽性細胞は上皮の上方のみにあり、深層の嗅細胞は4G12陰性であった。その後に起こる染色パタ-ンの変化は、「陽性一浅層」が嗅上皮に占める割合が除々に増加し、「陰性一深層」の占める割合が減少した。したがって、一側嗅球除去により、嗅細胞は死減するが、その後再び、嗅細胞が出現し、改復する。そして、その改復過程は、発生・分化の再演であった。また、嗅細胞の変性後に起る嗅細胞の再出現は、嗅上皮にある基低細胞の分裂増殖によることを確認した。 嗅細胞の変性後に起きる嗅上皮上の再生は神経系の可塑的変化を研究するのに都合が良いモデルと考えられるので、今後さらなる研究の継続が必要である。
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