扁桃核および海馬の短期記憶機能をニュ-ロン・レベルで調べる目的で本研究はスタ-トした。平成3年度は、これまでに記録したニュ-ロン活動のデ-タを様々な視点から解析処理を行うとともに、これまでデ-タの不足していた海馬の前部からさらに記録を行った。また、側頭連合野からも記録を行って、扁桃核および海馬のデ-タと比較検討した。 短期記憶に相当する時期に持続的なニュ-ロン活動を示し、しかも、そのような活動が特定の記憶内容に限って見られるとき、そのようなニュ-ロン活動は短期記憶の担い手として有力な候補と考えられる。このような活動は、サルが正しく学習課題の1試行を終了したり、学習課題を途中でやめたりした結果、もはや記憶が必要なくなると停止した。また、反応すべき刺激を見逃して1試行がまだ終了していないと勘違いするときは、サルがそれに気付くまでニュ-ロン活動は持続した。これらの事実は、このような持続的活動が短期記憶と密接に関連することを示すものと考えられた。このようなタイプのニュ-ロン(記憶ニュ-ロン)は扁桃核では約5%見られ馬では見つけることができなかった。扁桃核の記憶ニュ-ロンはすべて高い刺激選択性を示し、20%以下の視覚パタ-ンにのみ反応した。一方、扁桃核と海馬の両方から刺激選択性の低い持続的ニュ-ロン活動が短期記憶の時期に対応して記録された。このタイプのニュ-ロンは記憶内容に無関係にすべての記憶期に活動するので短期記憶の担い手の候補にはならないが、短期記憶の時期の注意の維持などのより一般的な役割を演じている可能性がある。さらに海馬では、4ー6Hzの周期的ニュ-ロン活動が記録されたが、この活動も視覚パタ-ンや記憶内容と関連していなかった。比較のために側頭連合野からニュ-ロン活動を記録した結果、23%が記憶ニュ-ロンであり、そのほとんどが、記憶期に3ー6Hzの周期的活動を示した。
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