研究概要 |
初年度の研究の目的として掲げた課題と、それに対する研究結果を以下にまとめる。 1 胸髄起始脊髄小脳路細胞(SCT)の同定と分類:解剖学的に 1)クラ-ク柱細胞,2)Rexedの第V層,3)第VIII層にSCT起始細胞が存在することが報告されていた。今回の実験で,1-群は同側上行性、2-群は対側上行性、3-群には同側と対側上行性細胞が混在していることが明かになった。 2 胸髄起始SCT細胞活動の呼吸運動に伴う動的応答の解析:上記3群すべてに呼吸運動に対応したリズム活動を示す細胞が存在した。しかし、性質は異なっていた。すなわち、 1,2-群の同側上行性SCT細胞は、非動化し人工呼吸に移行しても人工呼吸のリズムに対応した活動が見られるが、気胸し胸郭の動きをなくすとリズム活動は消失した。 2,3-群の対側上行性SCT細胞の多くは、自発呼吸のとき呼吸に対応した活動はみられなかった。しかし、非動化し人工呼吸に移行した後、気胸し胸郭の動きをなくした標本では、中枢性呼吸リズム活動を反映する横隔神経活動と一致したリズム活動を示すSCT細胞が存在した。 3 以上のように、SCT細胞は軸索の上行経路の違いに対応して、機能的にも異なった性質を持つことが明かになった。そして、SCTには末梢性入力情報を小脳に伝達するばかりでなく、脊髄に下降してきた中枢性運動指令情報を小脳に伝える系が存在することが呼吸運動との関連であきらかになった。
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