本研究の目的は、下垂体・副腎皮質系ホルモンの頂点にある視床下部コルチコトロピン放出ホルモン(CRF)の合成分泌を支配する概日性生体振動入力系の解明である。概日性生体振動としては、自由摂食下で表現され、視交叉上核に依存する光同調性概日振動と、制限給餌下で表現され、視交叉上核に依存しない給餌同調性概日振動がある。 1)視床下部CRFの24時間変動 CRFが合成される室傍核とCRFが分泌される正中隆起部で、CRF濃度の24時間変動をラットで測定した。自由摂食下では、CRF濃度は明期前半に高く暗期前半に低下した。一方、制限給餌下では、CRF濃度は給餌時刻の直前に低く給餌後上昇した。この変化は室傍核、正中隆起部で同じであった。この結果、光同調性概日振動と同様、給餌同調性概日振動もCRFの合成分泌を支配していることが明かとなった。 2)給餌性CRF概日リズムの入力系 給餌性概日振動の室傍核CRFニュ-ロンへの入力系を明かにする目的で、中枢神経に作用する種々の薬物を脳内に微量投与した。その結果、カテコ-ルアミンの枯渇剤である6ーOHDAを脳幹から室傍核に投射している上行性カテコ-ルアミン作動性神経に作用させると、給餌性CRF概日リズムが選択的に抑制された。 3)給餌性CRF概日リズムに対するノルアドレナリンおよびニュ-ロペプチドYの役割 室傍核におけるノルアドレナリン分泌を脳内微小透析法にて測定した。ノルアドレナリン分泌はCRF分泌が高まっている給餌直前に増加し、CRF分泌に促進的に作用していることが示唆された。一方、室傍核ニュ-ロペプチドY濃度は給餌直後に上昇し、給餌による分泌抑制が示唆されるとともに、ノルアドレナリンとの協調作用が推測された。
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