本課題では、中枢浸透圧受容器とよび視床下部・下垂体後葉系を含むラット新鮮脳ブロック標本を用いて、浸透圧受容機構および性腺機能間の機能的連関の解明を目指した。まず、中枢浸透圧受容器(AV3Vに限定)、視索上核および下垂体後葉を付けた底部視床下部標本を作成し、内頚動脈枝断端よりの血管内人工脳脊髄液注入によって長時間に渡るブロック標本の神経機能維持を図った。幾つかの困難はあったが、かなりの確率で神経機能の維持が可能となってきており、下垂体後葉の電気刺激による視索上核神経分泌細胞活動の逆行性興奮を利用した同定、および他の脳部位の刺激による神経分泌細胞の順行性興奮を誘来することが可能となった。しかしながら、脳スライス標本に比べてニュ-ロンの自発活動活性が低いため、更に潅流などの実験条件の改善を行い、定常条件下での成績の集積が必要と思われ、現在も研究課題に沿った実験を継続中である。また、前回および今回の科学研究費補助を受けて、統合した成績は論文としてまとめて提出しAm.J.Physiol.(Reg.Int.Comp.Physiol.)に受理された。これは、視床下部視索上核レベルにおける浸透圧受容機構が血中の卵胞ホルモン(エストロジェン)濃度に影響を受け、その感受閾値を低下させることをin vitro実験系にて証明したもので、妊娠中毒症や電解質代謝異常などの病態を語る上で重要な基礎的成績であったと思っている。また、これに先立って、視床下部質傍核におけるニュ-ロンの化学感受性がやはり、血中エストロジェン濃度の影響を受けることを示した成績を提出していたが、本年度に受理された(Biomed.Res.)。これらの論文は本課題の解明・確立にとって基礎となるものであった為、本課題の遂行には無くてはならない成績であった。また、本課題に関連して視床下部後葉系機能の理解を増すため、二つの実験を別個に行い、すでにこれらの成績は受理されている(リスト参照)。
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