研究概要 |
1.ニワトリ小腸のレチノ-ルエステル化酵素(LecithlinーRetinol Acyltransferase、LーRAT)の精製 細胞性レチノ-ル結合蛋白質タイプII(CRBP(II))を結合したアフイニテイカラムを用い、ニワトリ小腸の粘膜ミクロソ-ム画分を可溶化して精製した。単一のLーRAT蛋白質が得られ分子量は約55,000であった。 2.ニワトリの発達過程における小腸LーRAT活性の発達に伴う変動 LーRAT活性は十二指腸と空腸に高く、回腸では低値であった。十二指腸と空腸のLーRAT活性はニワトリのふ化前にはこの酵素の誘導は見られないが、ふ化に伴いその活性は急速に上昇し8日齢で最高値を示した。その後活性は下降の傾向を示した。LーRAT活性のふ化後の誘導は食餌からのビタミンA吸収の開始との関連が推察された。 3.ニワトリ小腸LーRAT活性に及ぼすビタミンA欠乏とレチノ-ル再投与の影響 ふ化後のヒナにビタミンA欠乏食を投与すると、欠乏状態になる以前にLーRAT活性は低下した。ビタミンA欠乏状態のヒナに欠乏食からレチノ-ル添加食に切り換えると、血清レチノ-ルの低濃度が回復しない以前に小腸のLーRAT活性は回復し上昇した。LーRAT活性は食餌からのレチノ-ル吸収により誘導されることが明かとなった。 4.ニワトリふ化前後の肝臓に出現する細胞性レチノ-ル結合蛋白質タイプII(CRBP(II))の生理的意義の解明 ニワトリのふ化前後には腹腔内に入込んだ卵黄嚢からの供給により血中および小腸管腔内のβカロテン濃度が上昇した。CRBP(II)はレチナ-ルも特異的に結合するので、βカロテン濃度の上昇は、ふ化直前から一過性に肝臓に出現するCRBP(II)、肝臓でのレチナ-ル還元酵素活性の誘導と対応していた。故に小腸機能の未熟な出生直後には肝臓でもβカロテンのレチノ-ルの転換が行われるために肝臓での一過性のCRBP(II)出現が示唆された。
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