1.ラットの脳局所血流測定法の確率;脳血流の測定としてこれまで確立されている水素クリアランス法と近年開発されたレ-ザ-ドップラ-法を用い、脳皮質血流を測定した。水素クリアランス法は局所血流の絶対値を測定するのに適した方法であるが10分間に一度しか測定できず、従って断続的に血流を測定する事になる。一方レ-ザ-ドップラ-法は局所血流を継時的に測定する事が可能であるが、血流の絶対値についてはまだ問題があるとされている。ウレタン1.1g/kg麻酔下のラットを人工呼吸下におき呼気中のCO_2を約4%に保ち、血圧と体温を一定に維持した状態において、水素クリアランス法で求めた安静時の皮質局所血流は22〜37ml/100g/minであった。次いで脱血や頚動脈閉塞あるいは高炭素ガス刺激や下大動脈閉塞などによって高い脳血流や低い脳血流の状態を作り、その際の脳皮質血流を上記の二つの方法で測定し、その相関を求めた。両方法を用いて得られた脳皮質血流の値には有意な相関が認められた(p<0.01)。(文献1) 2.ラットの海馬局所血流量の測定;レ-ザ-ドップラ-法を用いて麻酔ラットの海馬局所血流を測定した。ウレタン麻酔下のラットを用い、血圧、体温、吸気中CO_2を安定に保ち、海馬の局所血流を測定したところ、約2時間安定な血流が記録された。コリン作動性線維の海馬への投射が知られている中隔の電気的、化学的刺激により海馬血流の著しい増加が認められた。以上海馬血流が中隔に起始する内因性神経によって拡張性に調節されている事が示された。(文献2) 3.体性感覚刺激による脳局所血流調節;レ-ザ-ドップラ-法を用い、大脳皮質局所血流を継時的に記録し、皮膚の種々の部位に侵害刺激を加えたところ、皮質血流の増加が認められた。現在その機序を検討中である。
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