研究概要 |
細胞外・間情報伝達物質(神経伝達物質、ホルモンやオ-タコイドなど)に対する細胞膜受容体は、その一次構造および二次情報伝達系への情報転換のメカニズムの観点から3つの型に大別されている。II型に属する7回膜貫通型受容体はG蛋白共役型とも呼ばれ、連関するG蛋白の同定ならびに受容体と効果器との連関様式が解明すべき課題として重視されている。しかしながら、II型受容体と連関するG蛋白、そして活性化G蛋白の効果器への作用様式が明らかにされているのは極く一部にすぎない。解明された例にあっては、コレラ毒素や白日咳毒素がG蛋白の同定に大きな役割を果している。 II型受容体に属するα_1-受容体の刺激は、心筋細胞において収縮力の増加と一過性外向き電流(Ito)抑制による活動電位幅の増加をもたらす(Tohse etal Pflugers Arch.,in press,1990)が、これらの反応は上述した細菌毒素によって修飾されなかったことから、高分子G蛋白ではなく低分子G蛋白(21〜26KD)が関与する可能性を考えて本研究は企画された。低分子G蛋白をボツリヌスC型毒素がADP-リボシル化する知見(Maruyama etal,Eur.J.Biochem.,142,487,1984)を本研究に応用した。 実験には、α_1-受容体によるIto抑制を確認しているラット心室筋単一細胞を用いた。ボツリヌスC型毒素を作用させた単一心室筋細胞のItoをNaおよびCa電流を抑制している条件で検討したところ、α_1-受容体の特異的刺激によるIto抑制が消失する場合があることを認めた。しかしながら、検討し得た全ての細胞に観察される現象ではなく、結論を出すに至っていない。用いる毒素の入手源、C毒素による細胞処理条件や細胞の条件など成績の「ふれ」に影響する要因について次年度検討をつづける。チロシンキナ-ゼのイオンチャネルへの影響については未着手であり,平成2年度の研究にもちこされた。
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