血管の交感神経性反応は、必ずしもノルアドレナリンだけで説明できない。最近、私達は交感神経性反応の一部が、プリン作動性であることを見つけ報告してきた。今年度は、以下の点を明らかにした。 1.生体内分布:交感神経性プリン作動性反応が生体のどの血管において惹起されるのきか、イヌをもちいて検討した。その結果、プリン作動性反応は、脳底動脈、中大脳動脈、腸間膜動脈および静脈、門脈、伏在静脈において観察された。これに対し、アドレナリン作動性反応のみを惹起する血管は、頚動脈、大腿動脈、冠動脈であった。この結果は、交感神経性プリン作動性反応はイヌでは生体内に広く分布していることを示唆した。一方、ラットでは、胸部大動脈、腹部大動脈、大腿動脈でアドレリナン作動性反応のみが観察されるだけで、プリン作動性反応は、腸間膜動脈と尾動脈で軽度にしか惹起されなかった。同様の結果は、SHRでも観察され、イヌとラットでは、プリン作動性反応の関与が著しく違うことが明らかとなった。 2.降圧剤の影響:降圧剤として使われているニフェジピン(Ca拮抗薬)のアドレナリンおよびプリン作動性反応に対する影響を、イヌ腸間膜動脈を用いて比較した。その結果、プリン作動性反応の方がアドレナリン作動性反応よりもニフェジピンにより強く抑制されることが明らかとなった。また、高血圧発症関連物質アンジオテンシンIIは、プリン作動性を選択的に増強することも明かとなった。交感神経が低頻度で興奮する生理的条件下では、血管の収縮は主にプリン作動性反応によって惹起される。従って、本年度の結果は、プリン作動性反応が局所血流および血圧の維持に重要に関与していることを示唆するものであり、プリン作動性反応の洗濯的拮抗薬の開発は、高血圧治療に寄与するものと思われた。
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