青斑核由来ノルアドレナリンは仙髄副交感神経中枢ニュ-ロンのα_1受容体を介して興奮させ、膀胱を収縮させる。本研究ではさらに、青斑核ノルアドレナリン細胞が実際に排尿反射に関与しているか否か、この排尿反射を黒質由来のド-パミンがどのように調節しているのかを明らかにする目的で麻酔ネコを用いて研究を行った。得られた成績は次の通りである。1)膀胱内へ一定速度で生理的食塩水を注入すると、内圧上昇に伴い、膀胱に自発性収縮がえられた。この動物の両側青斑核に6-ハイドロキシド-パミンを注入し、ノルアドレナリン細胞を破壊した場合には、この自発性収縮は起らず、アドレナリンα、アゴニストのフェニレフリンを脊髄腔内へ投与した場合にこの自発性収縮は再発された。 2)正常動物において、膀胱内への注水によっておこる膀胱の自発性収縮は、黒質の電気刺激によって抑制された。しかし、青斑核刺激によっておこる膀胱収縮は黒質刺激によって抑制されなかった。黒質刺激による膀胱の自発性収縮の抑制は脳室内に投与しさハロペリド-ルおよびド-パミンD-2受容体アンタゴニストのドンペリドンにより拮抗され、D-1アゴニストのSCH23390の投与によっては拮抗されなかった。さらに、膀胱の自発性収縮は脳室内へ投与したド-パミンおよびキンピロ-ル(D-2アゴニスト)により抑制され、SKF38393(D-1アゴニスト)によっては影響を受けなかった。これらの成績から、排尿反射には青斑核由来ノルアドレナリンが中枢的役割を演じており、黒質由来のド-パミンは青斑核ノルアドレナリン細胞をド-パミンD-2受容体を介して抑制的に働き、排尿反射をコントロ-ルしていると考えられた。
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