研究概要 |
1)大脳辺縁系諸核の学習・記憶における役割を明らかにする目的で、これらの諸核の熱凝個破壊に基づく学習・記憶障害の相違を、3ーpanel runway課題および3ーlever operant課題を用いて検討した。脳局所破壊による実験的健忘モデルの中でも、嗅球摘出による学習・記憶障害が最も著しかった。この障害は術後1日目より5日目以降の方が著明であったことから、嗅球摘出による嗅覚欠損そのものに基因すると考えるよりも二次的神経変性に基づいている可能性が示唆された。また乳頭体破壊ラットでは著しいmaze課題での学習・記憶障害が認められたが、operant学習課題では障害されなかった。このことは、operant学習とmaze学習で記憶の質的相違を示唆するものである。一方、海馬破壊および嗅球摘出によって著しい逆転学習の獲得障害が認められ、海馬や嗅球は新しい環境への順応・適応に重要な役割を演じていることが示唆された。 2)薬物弁別法を用いて、学習・記憶障害に対する著しい改善作用を有するコリンエステラ-ゼ阻害薬amiridinおよびtetrahydroaminoacridine(THA)の薬物弁別特性の解明を試みた。physostigmineおよびarecolineはTHAおよびamiridin弁別刺激に般化し、またTHAおよびamiribin間においても交叉的般化が認められた。dopamine agonistであるlisurideやamantadineは両弁別刺激に般化または部分的般化を示した。一方、両弁別刺激はともに抗コリン剤scopolamineによって拮抗されたが、haloperidol,SCH 23390およびsulpirideよっては拮抗されなかった。以上の結果から、THAおよびamiribin弁別刺激はもとにACh神経系の機能亢進が最も重要な要因であるが、一部DA神経系の機能亢進も関与していることが示唆され、また両薬物は薬理学的にも類似していることが本薬物弁別実験の結果からも明らかにされた。
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