研究概要 |
6週齢と2年齢の雄性Wistar系ラットを用いて、ニコチンによる急性毒性について検討した。24.5mg/kgのニコチンを腹腔内(ip)投与した際の15分以内の致死率はそれぞれ42.9%、81.3%となり、2年齢が高く、15分以内の死亡例または生存例の脳内濃度の平均値はいずれも死亡例が高かった。ニコチン(5mg/kg,ip)投与後の血中ニコチン濃度の経時的変化を比較すると、平均血液濃度は20分以降120分まで、6週齢に比べ2年齢の方が高い濃度を、血漿薬物濃度曲線下面積の値は約3倍高い値を示した。2年齢の分布容積/吸収率およびクリアランス/吸収率は6週齢のそれらに比べ低下を、生物学的半減期は6週齢のそれに比べ約2倍大きい値を示した。ニコチンの生体内移行に於けるこれら因子の値より老齢ラットの血中濃度が急性毒性に関与していることが認められる。 6週齢のラットを用いて、ニコチンの脳室内(icv)投与による痙攣および致死効果を検討したところ、いずれも濃度依存的に増強され、その50%の痙攣量、50%の致死量は各々58.5ug/side,477.6ug/sideとなった。メカミラミン(5mg/kg,ip)前処置により、ニコチンによるすべての急性効果は拮抗されたが、ヘキサメソニウム(5mg/kg,ip)では効果を認めなかった。また、メカミラミン(50,100ug/side,icv)によっても拮抗作用は認められ、その効果は濃度依存的であった。フェノバルビタ-ル(50mg/kg,ip)、ジアゼパム(5mg/kg,ipまたは10,30ug/side,icv)、MKー801(40ug/side,icv)あるいはSCHー23390(10ug/side,icv)前処置により、ニコチンによる痙攣および致死効果は抑制された。ハロペリド-ル(10mg/kg,ipまたは10ug/side,icv)およびスルピリド(10ug/side,icv)はニコチンによる急性効果に影響を与えなかった。これらよりニコチンによる痙攣には神経性アミノ酸の関与が大きいことが示唆された。
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