高等動物のリボソ-ムは、4種類のRNAと約80種類の蛋白質から成る複雑な構造物であるが、この構成分は、同調して各々が過不足なく合成されていると考えられる。我々は、このような同調合成機構を明らかにすることを目的に、鶏のリボソ-ム蛋白遺伝子の転写調節機構について研究を行っている。 鶏のリボソ-ム蛋白L5、L7a、L30及びL37aの遺伝子をクロ-ン化し、塩基配列を決定した。この4種の遺伝子のプロモ-タ-領域には、典型的なTATAboxや、CAATboxは無く、いわゆるハウスキ-ピング遺伝子に特徴的な型を示している。いずれも転写開始点附近でCpGdimerの頻度が極めて高くなっており、5'上流域及び第一イントロンには、転写因子SpIの結合サイトとされるGCboxが複数存在するなどの共通した構成をもっている。 この4種の遺伝子のプロモ-タ-領域を詳細に比較したが、これまでのところ全てに共通した調節配列を見出すに到っていない。しかし、CTTCCGG、CTGCGCA、CTCGCGAGAなどの複数の遺伝子間に共通に存在する特徴的な配列が明らかになった。このような回文構造を含む特徴的な配列は、何らかの転写調節因子の結合に関与するものと考えられ、リボソ-ム蛋白遺伝子の転写調節は、複数の因子が各々多数の遺伝子の発現を調節するという、複数なネットワ-クを構成しているものと思われる。 現在、ここで見出された共通配列の転写調節への拘わりを証明し、また新たな調節配列を見出すために、CATassay、クロマチン抽出蛋白の結合実験などを進めている。
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