研究概要 |
本研究では,動物のホスファチジルコリン合成に関与する酵素遺伝子の1つであるホスファチジルエタノ-ルアミン(PE)ーNーメテル化酵素(PEM)遺伝子の単離を試みた。そのため1)まず既に我々が単離し,その構造を明らかにした酵母のPEM2遺伝子を利用し、ラット肝cDNAライブラリ-とのクロスハイブリダイゼ-ション法により実験を開始した。数回の試みを行ったが,この方法では目的遺伝子を単離できなかった。2)次に昨年度申請者が開発した酵母内発現ベクタ-(酵母URA3,2μ及び大腸菌Amp^r,Ori遺伝子を含有し,且つADHプロモ-タ-下流にセルチクロ-ニングサイトを持つ)を用い,ラット肝cDNA発現ライブラリ-を作製し,酵母pem2変異を相補することを利用した機能的クロ-ニングを行った。数回の試みを行ったがポジティブなクロ-ンを得ることができなかった。この原因を調べたところ,発現ベクタ-内に組込まれたcDNAの長さが不十分であるらしいことが判明し,cDNAの合成には熟練した技術が必要であると結論した。そこで3)岡崎と岡山により開発された分裂酵母変異株相補法(第12回日本分子生物学会講演要旨集238頁)を試みることにした。この目的のため大阪大学岡山教授より人肝細胞由来のCDNAライブラリ-の供与を受けた。新に分裂酵母変異株を得るために,野生株をEMS処理後,増殖にコリンを要求するものとしてspc1,spc2株を単離した。中間代謝産物及び酵素活性を測定することにより後者が目的とするpem2変異株であることを同定した。従って現在3法の準備が完全に整った段階である。一方,動物のモデル系として酵母を選びPEメチル化経路の調節機構についても解析した。PEM1,PEM2遺伝子の5^1上流側を解析したところ,共通配列として5^1ーCATRTGAAー3^1なる配列が存在することを見出し,この配列がコリンとイノシト-ルによるリン脂質メチル化酵素の調節に関与することを発見した。
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