研究概要 |
ミトコンドリア増殖に関する本研究によって、ミトコンドリアタンパク質遺伝子の転写制御機構の一部が明かにされ、ミトコンドリア脳筋症の変異遺伝子が同定された。 ミトコンドリアタンパク質量は主に、核にコ-ドされる遺伝子の転写制御によって決定される。そこで、核にコ-ドされる遺伝子として、ATP合成酵素とピルビン酸脱水素酵素遺伝子を例にとって、転写制御領域を解析し、転写制御領域を同定した。5'上流にはエンハンサ-が見いだされ、そのなかの一部はいくつかのミトコンドリアタンパク質遺伝子に共通であった。この共通転写制御領域によってミトコンドリアタンパク質が協調的に発現し、ミトコンドリアの増殖を決定していると考えられる。また、ATP合成酵素遺伝子の転写開始点にはinitiatorが見いだされた。 ミトコンドリア脳筋症の解析では、欠失のあるミトコンドリアDNAを解析し、反復配列のところで欠失が生じることを証明した。これらの患者は母性遺伝子を示さないので、欠失ミトコンドリアDNAが遺伝したというより、欠失しやすいなんらかの特性が遺伝したと解釈した。また、ミトコンドリア脳筋症で患者も多く、重症度も高いMELAS(mitochondria myopathy, encephalopathy, lactic acidosis and strokeーlike episodes)は、ミトコンドリアDNAの点変異によって発症することを証明した。この点変異は保因者である母親から遺伝することが明かとなった。ミトコンドリアDNAの変異によって生じる変化にといては、現在解析中である。 以上のように、ミトコンドリアタンパク質遺伝子の転写制御機構とミトコンドリア脳筋症の解析を同時に進め、ミトコンドリア増殖機構の一端が明かにされた。
|