アンチザイムはオルニチン脱炭酸酵素(ODC)の反応生成物ポリアミンによって誘導される蛋白質であり、ODCに特異的に結合してこれを不活性化する。われわれはアンチザイムとの結合がODCの迅速な分解の引金になる可能性を示唆してきた。本研究では下記のように遺伝子導入法によって、アンチザイムはポリアミンによるODC分解の加速に必要な蛋白質であることを直接的に証明した。 (1)アンチザイム全長cDNAのクロ-ニング すでに得られていた部分長のcDNAをプロ-ブとして、新たに作製したラット肝ライブラリ-から最長1.1kbのアンチザイムcDNAをクロ-ニングした。プライマ-伸長法によりmRNAのcap部位は本cDNAの5'端の14ヌクレオチド上流であることが示され、本cDNAはほぼ完全長とみなされた。大腸菌直接発現系における本cDNA産物はアンチザイム活性を有した。 (2)アンチザイムcDNAの遺伝子導入 アンチザイムcDNAを、デキサメサゾンにより制御可能なMMTV-LTRプロモ-タ-をもつ発現ベクタ-に組み込み、これをCHO細胞にリン酸カルシウム法で導入した。G418選択後デキサメサゾンによってアンチザイムが誘導される安定な形質転換細胞が得られた。この細胞にODCを誘導後デキサメサゾンを添加するとODCが消失した。 (3)アンチセンスDNAによる内在性アンチザイム遺伝子発現の抑制 当初計画していた化学合成アンチセンスオリゴヌクレオチド(15〜20ヌクレオチド)によるアンチザイム遺伝子発現の抑制を試みたが、抑制効果が得られなかった。そこでアンチザイムcDNAを逆向きに上記発現ベクタ-に組み込み、アンチセンスアンチザイムmRNAを発現させた。この形質転換細胞においてはデキサメサゾン処理後プトレッシンによるODC分解の加速効果が消失した。
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