研究概要 |
私達は前年度までに褐色白内障患者より得た褐色水晶体について分光学的解析法を用いて分析し,褐色物質が3ーヒドロキシキヌレニンの2分子縮合体であるキサントマチンであろうと推定した。この化合物の生成メカニズムとしては水晶体タンパク質のトソプファンが長期の紫外線曝露により3ーヒドロキシキヌレニンに変化し、さらに3ーヒドロキシキヌレニンが付加縮合し,タンパク質内にキサントマチンが形成されることによることを考えた。そこで今年度はこの考えの妥当性を検討するために,軽度白内障患者より得た淡黄色水晶体ホモジネ-トに3ードロキシキヌレニンの誘導体である3ーヒドロキシアントラニル酸,オルトアミノフェノ-ルを加え,48時間紫外線を照射した。その結果,これらの化合物は水晶体タンパク質に強固に結合し,しかもタンパク質は淡黄色から褐色ないしはオレンジ色に変化した。これらの試料を分光学的に分析し,吸収スペクトルを測定したところ,可視および近紫外部領域に独特な吸収ピ-クを示すスペクトルが得られた。この結果は淡黄色タンパク質内の3ーヒドロキシキヌレニン残基に3ーヒドロキシアントラニル酸ないしはオルトアミノクェノ-ルが付加、縮合して着色物質が紫外線の力で形成されたことを示している。またこの結果は前述の褐色白内障の褐色物質形成メカニズムの妥当性を支持する。 さらに私達は淡黄色水晶体タンパク質が3ーヒドロキシアントラニル酸およびオルトアミノフェノ-ル存在下,紫外線照射下で着色することを利用して,その着色阻害物質の検索を行った。とくに酸化防止剤であるアスコルビン酸,遷元型グルタチオン,ピノレキシン等の作用をしらべた。しかし乍らこれらの化合物については著しい着色阻害作用は見い出せなかった。今後、着色阻害作用をもつ化合物について検討をつづける。
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