研究概要 |
我々は既に新しい肝細胞の強力な増殖因子である肝細胞増殖因子(HGF)が高濃度にラット血小板中に存在することを見つけ単一標品にまで純化した。この因子は分子量69Kと34Kから成る二量体の熱および酸に不安定な蛋白性の物質である。その後、ラットにおけるHGFの臓器分布を初代培養肝細胞のDNA合成を促進する活性を測定することにより検討したところ肝臓に多くさん含まれていることがわかった。そこで肝臓からのHGFの精製を試みた。まず80gの肝臓に2容量の0.25Mショ糖を含むPH8.5の緩衝液を加えホモジネ-ト後、105000×g、1時間の遠心で得た抽出液をS-Sepharoseカラムにかけると大部分の蛋白は非吸着画分に溶出した。その後、0.15Mから1Mの塩濃度勾配で溶出すると0.68MでHGFが溶出した。次にこのHGF活性があった画分をHeparin-Sepharose-CL-6Bカラムにかけ0.3Mから2Mの塩濃度で溶出すると1M付近にHGF活性がみられた。さらにHGF活性のあった画分をMono-S,FPLCカラムで前記のS-Sepharoseカラムと同じ条件で再クロマトグラフイ-を行った。この段階のHGFはS-Sepharoseカラムにかけた直後のHGFに比べて41倍精製されており回収率は20.5%であった。さらに、このHGFを逆相カラム、RP-304 HPLCにかけ0.1% トリフルオロ酢酸存在下、アセトニトリル40%から50%の濃度で溶出すると42%でHGFが溶出した。肝臓由来のHGFの各種クロマト上の挙動および蛋白化学的、生物学的特性は血小板由来のHGFと全く同じだった。しかし、肝由来のHGFは血小板由来ののHGFと違って逆相クロマト後でも単一標本品にはなっていなかった。今後、Hydroxylapatite,Affi-Gel Blue等のクロマトを行い完全に純化し、分子量およびサブユニットの構成、種々の性質を調べ血小板由来のHGFと同じであるかどうか明らかにしたい。
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