合成した22種のカルパイン由来ペプチドを用い、多核白血球活性化能(遊走活性、脱顆粒活性)を測定した。遊走活性はヒト末梢血白血球のうち好中球のみならず単球に対しても認められた。好中球に対してホルミルペプチド(fP)はアセチルペプチド(aP)に比べ強い遊走活性を示し、最適濃度はfPでは10μMであった。単球では100pMであり、aPのほうがfPに比べ強い遊走活性が認められた。また単球系THPー1、Uー937やT細胞系MTー1やB細胞系BALLなどの白血病培養細胞に対してもaPは遊走活性を示し、現在詳細に検討中である。カルパインのアミノ末端はアセチル化されているので、本研究のカルパイン由来白血球活性化因子の標的細胞には好中球に加えて免疫担当細胞も含まれることが明らかになった。健常人42例、乾癬症患者18例、掌蹠膿疱症5例、扁桃病巣感染症4例、リウマチ1例の多核白血球にfPやaPを作用させ、脱顆粒活性を測定した。エラスタ-ゼ放出能はfPのみが反応し、各種aPでは健常人とも極めて微量であった。上記疾患患者の多核白血球は健常人に比べ約2倍強く反応することが認められ、これらの疾患では好中球の機能亢進が示唆された。ウサギの静脈に各ペプチドを投与したところ90分後に末梢血多核白血球が約30%上昇した。またモルモットではaPのうちaーMFLVのみが多核白血球活性化能を示した。とくにこのペプチドをブラジキニンとともに皮下投与すると、2時間後には多核白血球の強い浸潤が認められ、ブラジキニンなどの血管作動性物質とaーMFLVなどのカルパイン由来白血球活性化因子が細胞の浸潤に協調して働くことが示された。なお今回用いたペプチドは短いためか抗原性が弱くモノクロナル抗体が出来にくかった。そこで現在20残基以上のペプチドを合成し再度モノクロナル抗体の作製を試みている。
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