研究概要 |
赤血球膜の陰イオン透過は分子量が約95000ダルトンの糖タンパク質であるBand3タンパク質で媒介されることが証明されている。我々はこの蛋白質分子内における陰イオン透過活性中心の同定・分離・精製を目的として研究をつづけている。今日までの研究の結果Band3分子のカルボキシルキ末端から78個のペプチドが陰イオン透過活性中心の少なくとも一部を形成しており、特に、カルボキシルキ末端から60番目のリジン残基機能発現に重要であることを証明している(J.Biol.Chem.263,8232ー8238(1989))。さらに、このリジンとは別に、赤血球膜内側に存在しているヒスチジン残基も陰イオン透過活性発現に必須であることを明らかにしている(J.Biochem.99,495ー501(1986))。本研究では陰イオン透過過程におけるこのヒスチジン残基の役割を明らかにするのを目的として研究を行った結果、以下に列挙することが判明した。 1.このヒスチジン残基はBand3分子が内向きの構造をとるときのみ赤血球膜内側の露出する。 2.このヒスチジン残基をDiethylpyrocarbonateで化学修飾すると、Band3はもはや外向きの構造をとることができない。 3.このヒスチジン残基は陰イオン結合部位(Transfer Site)ではなくいわゆるアロステリック部位であることが推測された。 4.このヒスチジン残基のBand3分子内での一次構造上の位置はいまだ判らない。 以上の結果は裏面に記した論文に発表している。
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