研究概要 |
1.組織学的に鑑別を必要とする横紋筋肉腫、小細胞骨肉腫や神経芽細胞腫等を形態学的、免疫組織学的、細胞遺伝学的に検討し、ユ-イング肉腫と比較した。神経芽細胞腫は形態学的にHomerーWright型ロゼット像を認める点やneuronーspecific enolase(NSE)が免疫組織学的に陽性を示す点から鑑別が非常に難しい。新たに神経芽細胞腫株(HNBー18)を樹立し、ユ-イング肉腫との違いを検索して学術雑誌(Acta Pathol Jpn,41:507ー515,1991)に公表した。 2.分化誘導物質であるdbcAMPを用い、培養細胞を経時間的に観察した。dbcAMP非添加の培養液では、腫瘍細胞は不整多角型の小形細胞で細い細胞質突起を示したが、dbcAMP添加にても有為な形態学的な差異を示さなかった。1〜3日の経時間的観察でもコントロ-ルと有為な違いはなく、また、同時に行なった電顕による観察でも神経内分泌顆粒は見られなかった。 3.NSEの著明な活性をユ-イング肉腫に認める点から、細胞内のNSEの局在を免疫電顕にて検索した。PostーRmbedding法による検討の結果、腫瘍細胞の疎面小胞体の膜上にNSEの局在を確認した。 4.単クロ-ン抗体をSeki株の培養細胞より行ない、2クロ-ンが得られた。ユ-イング肉腫、骨肉腫、神経芽細胞腫、横紋筋肉腫、悪性リンパ腫等で免疫染色を試みたが、骨肉腫と神経芽細胞腫において交差反応が認められた。今回得られた2クロ-ンの結果は骨肉腫や神経芽細胞腫と共通の抗原認識部位を有する可能性が示唆された。 5.上記の形態学的、生化学的な結果よりユ-イング肉腫は神経外胚葉由来であろうと思われた。未熟神経外胚葉性腫瘍との異同は今回の検討では十分明らかにできなかったが、腫瘍細胞の発現、分化の違いによると思われる。
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