研究概要 |
今年度は神経芽腫群腫瘍におけるペプチドホルモンの産生と分泌機構を中心に研究を行なった。水様性下剤、低K血症、低胃酸症を症状とするWDHA症候群を伴った高分化型神経節芽腫3例を用い、Vasoactive intestinal peptide(VIP)Peptide histidihemethionine(PHM).Soma tostatin(SS),Neuropeptide Y.(NPY),M-enkephalin(M-EK),Substance P.(P),Cprticotropin releasing factor(CRF)Growth hormone releasing factor(GRF)等の免疫染色を行なうとともに、VIPとPHMの前駆体であるpreproVIPに対するcDNAと、preprosomatostatin遺伝子のDNAに対するantisense oligonucleotide probeを用いてISHを行なった。さらに、amine precur soruptake & decanboxylation(APUD)説の基本的な概念であるペプチドホルンモンはアミンホルモンと共存するという考えを確認するために、カテコ-ルアミン合成酵素のTyrosne hy droxylase(TH).Dopamine β-hy-droxylase(DBH),Phenylethanol amine N-methyltransferase(PNMT)に対する抗体を用いてそれらの存在の有無を検討した。その結果WDHA症候群を呈した3例のいずれの神経節芽腫の腫瘍組織においても、免疫組織化学的には、VIP,PHM,NPY,SS,M-EK,CRF,GRF,TH,DBHが大型のganglionic cellに陽性を示した。またin situ hybridization 法では、VIP,SS,のmRNAがほとんどすべてのganglionic cellの胞体に認められた。VIPとPHMは同一遺伝子から作られているホルモンでありprocessing で異なったホルモンに切り出されているものであるが、他のホルモンは互いに異なった遺伝子から作られているホルモンや酵素であり、これらが同一の細胞で同時に産生されていることが明らかとなったことば“細胞の機能発現"の解明の手がかりとなる可能性が考えられる。今後ISHの手枝の改良と共に他のホルモンや酵素のmRNAの同定を試みる予定である。
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