研究概要 |
平成2年度はヒト神経芽細胞腫NBー1細胞の培養細胞を用いて、phorbolesterやcAMPを投与することにより、vasoactive intestinal peptide,PHM,somatostatin,substance P,ty rosine hydroxylase,mーenkephalin等のホルモン産生が亢進することを、免疫組織化学、in situ hybridization法 radi immunoassay法、電顕を用いて証明し、ホルモン産生腫瘍としての形態学的特徴と機能発現を総合的に観察した^<1)>。また多数例の褐色細胞腫におけるカテコ-ルアミン合成酵素を免疫組織学的に検索し、従来組織学的には明らかに区別し得なかった機能性褐色細胞腫と非機能性褐色細胞腫の違いが、カテコ-ルアミンの律速酵素であるtyrosine hydroxylaseの有無または多少によることを明らかにした^<2)>。また同じくカテコ-ルアミン合成酵素の一つであるdopa decarboxylaseが褐色細胞腫のみならず、広くneuroendocrine tumorに包括されている下垂体腺腫、甲状腺髄様癌、副甲状腺腫、膵ラ氏島腫、カルチノイド腫瘍等に高頻度に存在し、これらの腫瘍のマ-カ-となり得ることを明らかにした^<3)>。一方再生に関与する遺伝子と示唆されているregenerating gene(reg)のcDNAを用いて、その膵における局在をin situ hybridization法で証明すると共に、その産物に対するmonoclonal抗体を用いてreg蛋白の局在と膵腫瘍における診断的価値を明らかにした^<4)>。大変稀な腫痛である褐色細胞腫と神経芽腫の混合腫瘍であるMixed neuroendocrineーneural tumorをペプタイドホルモンとカテコ-ルアミン合成酵素の有無等を検索することにより、その腫瘍の形態的特徴を明らかにした^<5)>。以上の成果を土台にして、副腎髄質腫瘍の総説を記した^<6)>。 また日本病理学会、泌尿器科学会の共同作業による「副腎腫瘍取扱い規約」の中の主として副腎髄質腫瘍の項を担当した。
|