ディスポ-ザブルシリンジを用いた器官培養法:生検材料、手術摘出材料、術中迅速材料から、剃刀を用いて1mm以下に薄切した材料を採取し、20mlのディスポ-ザブルシリンジ(ニプロ)に、注射針(18G、ニプロ)をつけ、Brd U(200μM、Sigma社)添加RPMI 1640培地(日水製薬)を約10ml吸引する。薄切材料をシリンジ内にいれ、内筒を元に戻してシリンジ内を培養液と材料だけにする。次に注射筒の針先から酸素を入れ、注射針をはずし、手製のアルミ製ホルダ-(厚さ、1.2mm)にシリンジの先端を押し付け、内筒を押して加圧する。酸素を1/3の体積に圧縮すると3気圧が得られる。ホルダ-を37℃の恒温水漕(大洋科学、Mini-80)に漬け、1時間振盪培養する。材料は70%エタノ-ル固定する。パラフィン包埋後3μn薄切標本を作成。脱パラフィン後、4NHCLで30分間処理し2本鎖DNAを1本鎖とした後、0.1MNa_2B_4O_7で中和した。抗BrdU抗体(Becton・Dickinson)を用いた酸素抗体法でDNA合成期の細胞を検索した。 標識結果の検討:生検材料、手術材料、術中迅速材料の新鮮材料は新鮮なほど良い結果が得られたが、摘出後直ちに培養液に入れ4℃に保存すれば、4〜5時間後でも十分な標識像が得られた。先天性横紋筋肉腫の皮膚転移腫瘍細胞の標識率は24%であった。表皮や皮膚付属器ではごく稀に標識細胞が認められた。手術摘出消化管の検索では、進行胃癌20例中15例、進行大腸癌8例全例、また直腸癌5例中4例で、びまん性の標識細胞の分布像が観察できた。進行癌の症例では、癌細胞が漿膜下まで浸潤し、粘膜、粘膜下、固有筋層、漿膜下と浸潤癌細胞に標識がびまん性に観察されたものがあった。標本も大きく外科材料の半分ほどでも、十分な標識が可能であった。本法は我々がすでに報告したex vivo autoradiographyに匹敵する標識方法を考えられる。
|