肝細胞癌症例剖検例15例について門脈に色素・ゼラチン加硫酸バリウム、肝動脈に色素加ゼラチンを注入し、腫瘍辺縁部の肉眼的観察、軟X線撮影をおこなった。ホルマリン固定後、パラフィン包埋、薄切し、HE染色、を行い顕微鏡的に検討した。一部のブロックは脱パラフィンをおこない、サリチル酸メチルにて透明標本を作成し、実体顕微鏡により腫瘍辺縁部の血管構築を検討した。 これとは別に肝細胞癌切除例41例、肝細胞癌剖検例21例について、HE染色、エラスチカ・ワン・ギ-ソン染色、アザン・マロリ-染色等をおこない、肝細胞癌腫瘍境界部をencapsulated type、granulation type、stromal type、replacing type、sinusoidal typeに分類した。encapsulated typeは真の被膜をゆうするもの、granulation typeは腫瘍周囲に肉芽形成がみとめられるもの、stromal typeは肝硬変間質と接するもの、replacing typeは肝細胞索を置き換えるように発育するもの、sinusoidal typeは類洞内に浸潤性に発育するものである。granulation type、stromal typeなどの被膜類似構造と真の被膜(encapsulated type)との違いがヒアリン化にあることを明らかにした。 このようにして区別した腫瘍辺縁部の構造と血管構築との関連をみるとencapsulated typeでは門脈血の流入が、ほとんど認められないのに対し、他の型では門脈血の流入が認められた。とりわけstromal typeでは著明な門脈血の流入が認められた。 encapsulated typeの最小のものは1.0cmであり、肝細胞癌において、被膜は1.0〜2.0cmの時期に完成するものと思われる。娘結節、肝内転移は腫瘍径の小さいものが多く被包型が少ないため、肝動脈塞栓療法の無効例が多いと考えられた。
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