肝細胞癌剖検例15例について門脈に色素・ゼラチン加硫酸バリウム、肝動脈に色素加ゼラチンを注入し、肉眼的観察、軟X線撮影をおこなった。対象はすべて肝硬変合併例である。ホルマリン固定後、パラフィン包埋、薄切し、HE染色をおこなったのち、パラフィン・ブロックの脱パラフィンをおこない、サリチル酸メチルにて透明標本を作成し、実体顕微鏡により観察し、HE染色と対比し、肝内のarterioーportal communicationの有無及び形態について検討した。門脈内腔を螺旋状にとりまく動脈(門脈のvasa vasorum)から門脈への動脈のshuntが認められた。また、リピオド-ルの注入時にはsinusoidを介するshuntが観察された。 一方、これとは別に肝動脈塞栓による非癌部の肝実質の変化を、非肝動脈塞栓例24例、診断の目的でリピオド-ルのみ注入した症例21例、リピオド-ル非併用肝動脈塞栓例29例、リピオド-ル併用肝動脈塞栓例69例について検討した。 肝梗塞、肝内胆内管の破裂はリピオド-ル併用肝動脈塞栓例に認められた。リピオド-ルは門脈血流をも障害するためと思われる。 肝動脈塞栓術の肝実質の線維化、肝炎の活動性への影響は認められなかった。 肝動脈塞栓例では虚血によると思われる細胆管増生を伴うグ鞘炎を認めた。この変化はび漫性のものではなく部位により差が認められた。非癌部肝においては肝実質への影響に比し、胆管、門脈域への影響が強く認められた。肝実質に比し、胆管、門脈域では栄養血管としての肝動脈への依存が強いためと思われた。
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