研究概要 |
腎系球体疾患やARE,HUS等にみられる尿細管間質病変の成因について今まで追球して来たが、今年度は間質性腎炎(IN)と移植腎の急性拒絶反応(AR)を対象にその病変の違いを超微形態学的に検討した。INは14例で6例が薬剤性、急性腎不全は6例にあり、5例に蛋白尿をみた。ARは細胞性20例と液性12例(ABO不適合)でいずれも移植後3ケ月以内であった。INの特微は、1.浮腫や浸潤細胞による間質拡大であり、尿細管上皮の腫大・変性および莠縮がみられ、基底膜の非薄化や肥厚を認めた。2.浸潤細胞は多採であり、リンパ球、単球や形質細胞が活性化を示して増生巣を形成し、その間に質細胞が介在していた。好酸球や好中球も例により加わった。3.尿細間上皮間への細胞浸潤を示す尿細管炎(Tubulitis)は特微的で、リンパ球が最も頻度が高く単球や好中保球もみられた。上皮細胞の変性や腫大および増生を伴っていた。4.間質細胞が浸潤細胞を取り囲む様に増生・発達して炎症の場を構成し、リンパ管様脈管外通液路を形成すると思われる。一方、周囲に膠原細線維の増加や付着を伴う線維(芽)細胞への移行も認めた。5.毛細血管壁は保たれるがその断面は拡大した間質部で減少し、それにより尿細管の妥縮や間質の硬化が起こる可能性がある。6.肉芽腫には粗面小胞体の発達した類上皮細胞の増生がみられ、尿細胞壁の破綻部に連続して認められた。ARの特微は細胞性では、リンパ球や単球による単調な増生巣が間質に形成される。間質細胞がINと同様に介在し、尿細管上皮間およびボ-マン嚢壁や静脈内皮下への細胞浸潤が目立つ。液性では,細血管壁に接する様に多核白血球が浸潤し、内皮の変性制脱・再生が目立ち、血栓や間質浮腫,血球漏出が顕著であった。INとは異なり標的細胞への免疫活性化細胞の反応増生である。細胞性は尿細管上皮が主で液性は血管内皮への反応し思われる。
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