研究概要 |
組織球性壊死性リンパ節炎(HNL)は特異的な像を呈するが、病因は明らかでなく、臨床症状からウイルス感染が疑われている。そこでウイルス感染初期に産生されるインタ-フェロン(IFN)により誘導される2´5´オリゴアデニル酸(2ー5A)合成酵素活性をHNL患者血清について測定した。また病変リンパ節での増殖細胞を把握するため、増殖細胞の核に反応するKi67抗体と、細胞膜に染るCD4(helper/inducer),CD8(cytotoxic/suppressor),CD15(monocyte)抗体とで二重染色を行った。(結果)HNL30例中、2ー5A合成酵素活性が100pmol/dl以上の陽性を示すものが12例にみられ、対照とした健常者、非感染性疾患、サルモネラ胃腸炎では上昇はなく、ウイルス疾患では上昇していた。2例のペア血清では活動期の陽性値が正常化していた。発熱及びリンパ節を触知した日を発病日とすると、2ー5A合成酵素活性は病日と共に、低下する傾向を示した。二重染色を行ったところ、増殖細胞(Ki67陽性細胞)の大多数はCD8陽性細胞であった。この増殖を示すCD8細胞は病日と共に、徐々に減少してきていた。また増殖性のCD4陽性細胞はほんのわずかしか見られず、増殖性のCD15陽性細胞は皆無であった。(考察)2ー5A合成酵素はINFにより誘導され、HNLの発症に、ウイルスの関与する可能性を強く示唆していたが、ただINF産生はウイルス感染のみでなく、自己免疫疾患、トキソプラズマを含む原虫、細菌感染でも産生され決定的ではなかった。また今回の検索で、増殖細胞の主体がCD8陽性細胞で、病日とともに減少してきている。また増殖細胞に占めるこの細胞の割合は病日に関係なく一定であり、この細胞は増殖しつつ、一方で崩壊しているものと考えられた。以上よりHNLの病態には、CD8陽性細胞の関与する局所細胞免疫反応が重要な役割を演じているものと考えられた。
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