(1)マウス分化抗原Lyー5(ヒトのCD45に相当する)は、IgMからIgGへのクラス変換の過程で制御機能を担っている分子である。本研究においては、Lyー5の生理的役割の理解と臨床への応用という観点から、in vivoのモデル(BXSBマウス)を用いて検討した。BXSBマウスは、Y染色体に自己免疫病を増強する因子が存在し、ポリクロ-ナルなB細胞の活性化、抗DNA抗体を含めた自己抗体の産生、重篤な糸球体腎炎を免疫学的な異常としている。さらに、血清抗体・自己抗体がIgMからIgGへクラス変換することと自己免疫病の発症が密接に関連を持っており、Lyー5の制御機能を解析するのに絶好の系統である。BXSBマウスにおけるLyー5の機能に異常がないことを確かめた後に、Lyー5抗体の投与によりIgG産生を抑制し、自己免疫病の発症を予防することができるか否かを検討した。その結果、モノクロ-ナルLyー5抗体の投与により、末梢リンパ組織のリンパ球サブセットに歪みは生じず、蛋白尿・腎病変・死亡率が著しく改善され、IgGクラスの抗DNA抗体の濃度が減少することが明らかになった。このことは、Lyー5抗体が自己免疫病治療の一つの有力なオプションになる可能性があることを示唆している。 (2)各種造血系細胞の活性化・分化を制御しているインタ-リュ-キン4(ILー4)のレセプタ-を介するシグナル伝達機構には、未だ不明な点が多い。本研究では、ILー4のB細胞におけるIa抗原の誘導活性を指標とし、細胞内反応の各種抑制剤を用いて、ILー4の活性発現に関与しているsecond messengerの同定を試みた。その結果、細胞内でCa^<2+>の遊離を阻害する薬剤だけが効果的であった。従って、少なくともB細胞においては、局所のCa^<2+>動態が重要な役割を果たしている可能性が考えられる。
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