研究概要 |
老化アミロイド-シスの分子遺伝学的研究によって本年度に得られた新たな知見は以下に述べる事実である。1.老化促進モデルマウス(SAM)を含む21系統の純系マウスにおいてapoA-IIの老化アミロイドとしての沈着が示され、これまで不明であったマウスの老化アミロイド蛋白がapoA-IIであることが判明した。2.各系統マウスのDNAよりapoA-II遺伝子をPCR法で増幅し塩基配列を決定したところアミノ酸配列が互いに異なる3種のapoA-II蛋白が存在することが明らかになった。3種のapoA-II(types A,B,C)は増幅したDNAを制限酵素、Cfr13IとMspIで消化するか、直接genomic DNAをRsaIで消化した後、Southern blotを行うことで区別できること明らかにした。3.各系統における老化アミロイドの沈着の強さとapoA-IIのtypeとの関係を調べたところ、第5目のアミノ酸がglutamineという特徴を持つtypeAのapoA-IIを持つSAM-P/1,SAMP/2,SJL/J等のマウスでは比較的若齢より、重篤なアミロイド沈着を示した。4.異なったtypeのapoA-IIを持つ系統のマウスを交配させF2,F3を作製し各々のマウスのアミロイド沈着とapoA-IIのtypeを調べたところtypeAをホモでもつ個体のみで強いアミロイドの沈着が観察された。以上の様に老化アミロイドの沈着には沈着蛋白であるapoA-IIの分子型が非常に重要であることが判明した。またその遺伝様式も常染色体劣性の可能性が強く示唆された。現在はapoA-II遺伝子を用いたトランスジェニックマウスやcongenic strainを作製中であり、より詳細な分子遺伝学的情報が得られるはずである。さらにin vitroでアミロイド蛋白の線維化を定量化する系が確立されapoA-IIの分子型などのアミロイド発症に関与する因子の解析を進めている。
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