研究概要 |
老化アミロイド-シスの分子遺伝学的研究によって本年度に得られた新たな知見は以下に述べる事実である. 1、ApoAーIImRNA発現量の加齢に伴う特異的減少:マウス老化アミロイド-シスの沈着蛋白は血清高密度リポ蛋白のアポ蛋白であるapoAーIIである.老化アミロイド-シス好発系のSAMーP/I系マウスでは加齢にう血清apoAーII濃度の減少,代謝速度の亢進が観察される.今回はapoAーIIの代謝動態とアミロイド沈着との関係を調べるため肝臓でのapoAーIImRNA発現量の加齢変化を調べた.SAMーP/1のapoAーIImRNA発現量は4ヶ月齢より減少し始め14ヶ月齢では2ヶ月齢の約50%にまで減少した.これに対しアミロイド嫌発系のSAMーR/1では10ヶ月齢以降にわずかな減少が観察された.ApoAーI,apoE,apoB等の他のアポ蛋白mRNAの発現量は変化しなかった.これらのことからSAMーP/1においてはapoAーIIに特異的な代謝動態の変化がアミロイド沈着に先行することが明らかになった.この様な変化がアミロイド沈着の原因となっているのか,またapoAーII蛋白の分子型によるのか等は現在さらに研究中である.2.Transgenic moose,congenic mouseの作成:現在までにSAMーP/1型のapoAーII遺伝子の上流にマウスのメタルチオネインのプロモ-タ-を結合したfusion gene をSAMーR/1に導入したtransgenic mouseの作成に成功し,充分な数の老齢マウスがそろいしだい,アミロイド沈着,促進老化,apoAーIIの代謝等を調べる予定である.SAMーP/1の型apoAーIIをSAMーR/1のbackーgroundにまたSAMーR/1型のapaAーIIをSAMーP/1のbackーgroundに導入したcongenic mouseを現在作成中であり第5世代まで進行している.3.マウス老化アミロイド線維重合のin vitro反応速度論的特徴:In vitroでアミロイド蛋白の線維化を定量化する系が確立され,アミロイド線維の重合がactineや microtubule等の重合モデルと同一であることが示された.
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