ヒトTリンパ球にIL2を添加すると、きわめて早期に細胞内65K蛋白のリン酸化が惹起される。この蛋白を精製しその中の郁幾つかのペプチドのアミノ酸配列を決定し、ヒトTリンパ球株のcDNAライブラリ-からこの蛋白をコ-ドする遺伝子を得て、この蛋白の全アミノ酸配列を決定し、この蛋白がN末端から2つのCa結合ドメイン、1つのカルモジュリン結合部位、更にC末端側に2つのアクチン結合ドメインを有することを明らかにした。又リン酸化されるセリン残基がこの蛋白のCa結合ドメイン中に存在することを明らかにし、この蛋白のIL2によるリン酸化の役割はCa依存性を変化させることにあることが示唆された。 上記セリン残基のリン酸化がIL2による増殖シグナルの伝達に重要な意味を持つか否か検索する目的で、metallothionein promotorを有する発現ベクタ-に、上記のセリン残基をグリシン残基に置換した変異遺伝子を組込んで、ヒトIL2依存細胞株(UWー4)に導入してstable transfectant細胞株を多種類得た。これら細胞株にZnSO_4を20μM添加した培地で培養し、上記変異遺伝子を発現させた。その結果これらの細胞株ではIL2による細胞増殖が著しく低下することが判明した。この細胞増殖シグナルの伝達の障害は比較的低濃度のIL2を添加した場合に起る。又ZnSO_4の効果は添加後2〜3日後に認められる様になり、UWー4細胞の65K蛋白が変異蛋白に或る割合で置き変った後に伝達障害が起ることが推定された。べクタ-のみ或いはoriginal geneを組込んだベクタ-をtransfect したものでは、この様な変化は起らない故に、上記リン酸化反応がIL2による増殖シグナルの伝達に重要な役割を演じていることが示唆された。
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