研究概要 |
無血清培地を用いてラット乳腺から正常乳腺上皮細胞株を樹立した。株化細胞のcharacterizationを電顕、免疫組織化学、同係ラットへの移植等により行った結果、株化細胞は乳腺のduct由来の細胞であることが判明した。この細胞を標的細胞として、乳腺細胞に対する増殖活性を定性及び半定量できるassay系を確立した。同様に、無血清培地を用いてprolactin分泌性下垂体腫瘍(MtTーF4,MtTーF84)、放射線誘発下垂体腫瘍(PT1,PT3)から4系の下垂体細胞株を樹立した。各細胞株の培養上清の増殖活性を前述のassay系で検索した。その結果、放射線誘発下垂体腫瘍の培養上清中に、乳腺細胞に対する強い、増殖活性を認めた。PT1の培養上清中の活性因子は分子量1000以下で、熱(100℃,2分間)及びtrypsin処理に対し安定な分子であることから、蛋白性因子以外の可能性が示唆された。PT3の培養上清中の活性因子は、熱及びtrypsin処理により失活することより、ペプチド性因子である可能性が考えられた。そこでPT3から、より強い増殖活性因子の分泌能を有するクロ-ンの分離を試み、cc152株を得た。この細胞株は無血清培地において、insulin存在下でglucocorticoid依存性の増殖を示した。さらに基礎培地にglucocorticoid単独添加のみにより増殖可能なcc152ーc3株をcc152株から分離した。このglucocorticoidの増殖促進作用はglucocorticoid受容体のantagonistであるRV486の添加により抑制された。この培養上清にはcc152及びcc152ーc3細胞に対する増殖活性が認められた。しかし、glucocorticoidとRV486を同時添加した培養上清にはこれら細胞に対する増殖活性は認められなかった。以上のことより、cc152ーc3細胞はglucocorticoidの刺激によりautocrine growth factor(s)を分泌しているものと考える。GIucocortioidによりautocrine growth factor(s)の分泌が誘導される細胞株の報告は全くなく、現在、この因子の分離・精製が進行中である。
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