研究概要 |
クロイツフェルト・ヤコブ病(以下CJDと略す)は,原因不明の伝染性疾患で,脳に海綿状脳症をひきおこすスロ-ウィルス疾患と考えられている。CJDの原因物質の1つとしてアミロイド蛋白(プリオン蛋白)が提唱されており,我々を中心にCJDで出現するクル斑がプリオン蛋白より構成されることを免疫学的に報告してきた。前年度はこのプリオン蛋白の微量定量法を確立し,300pg以上のプリオン蛋白を定量可能とした。本年度は,確立した定量法を用いて、福岡1株,2株というマウスでの継代株を用いて,プリオン蛋白定量,感染力価の測定,クル斑の出現頻度を検討した。プリオン蛋白の濃度と感染力価の強弱には正の相関関係をみとめ,福岡2株のマウス脳では、3〜10倍のプリオン蛋白が多く含まれ,感染力価も10倍高く、クル斑の頻度も高いことを報告した。以上の結果は、プリオン蛋白と感染物質が非常に似たものであることを示唆するとともに,感染物質の株による差が存在していることも示しているといえよう。また,微量定量法の確立に必要な精製したプリオン蛋白を用いて,アミノ酸配列の決定も行った。クル斑を構成している蛋白を純化精製したところ、免疫組織学的な間接証明だけでなく,蛋白化学的にもクル斑はプリオン蛋白より構成されていることを明らかとした。さらにクル斑形成に関与するプリオン蛋白は、N末端より102番目のプロリンがロイシンに置換した変異型プリオンがその主な構成成分であることを証明した。加えて,アミノ酸配列では同定できなかったプリオン蛋白のN末部分の抗体を新たに作製し,in situにて,N末のアミノ酸配列もまたアミロイド形成に関与していることを明らかとした。これらの結果は,研究発表として以下の論文にまとめた。
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