好酸球増多を特徴とするヒト疾患のうちで木村氏病を含む過好酸球症候群では病変局所および末梢血T細胞は何の刺激を加えることなく、分子量5〜7万、PI値約6.0の好酸球遊走性リンホカインを産生している。その産生は患者の単球由来物質(分子量1〜2万)がT細胞に作用することにより誘導される。ところが、寄生虫感染症(マンソン住血吸虫)の患者のT細胞は無刺激の状態で培養しても好酸球はもちろん好中球やマクロファ-ジに対する遊走活性を産生しないが、通常では遊走活性の産生を誘導しない低濃度のConA刺激によって好酸球遊走活性のみを選択的に産生するようになる。このT細胞による好酸球遊走活性の産生増強は患者単球が産生する分子量1〜2万の物質がT細胞に作用することによることが明らかにされた。すなわちこの物質と低濃度のConAで刺激されたT細胞は好酸球遊走活性を産生した。このConA刺激で産生される好酸球遊走性リンホカインは分子量は5〜7万であるが、等電点は明らかに異なり、約7〜7.5と8.0〜9.0の2つの分画に活性をみとめた。これら2つの疾患における遊走性リンホカインの産生機序は刺激依存性のうえで明らかに異なっているが、その生物学的作用の面でも明らかに異なっていた。作用する細胞の点では、ともに正常ヒト好酸球に対して同程度の活性を示す濃度で過好酸球症候群から得られた好酸球は前者に対しては著明な遊走を示すのに後者に対しては遊走を示さなかった。また、前者は好酸球膜上のFcεレセプタ-発現を増強するのに対し、後者はC_3bレセプタ-の発現を増強した。これらのことから、疾病の原因のちがいによって、産生、機能を示す遊走性リンホカインは異なり、作用する好酸球や作用をうけた好酸球が発揮する機能も疾病によって異なることが示唆された。
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