NODマウスは自己免疫性の膵島炎を自然発症し、その結果I型糖尿病を発症するモデル動物として注目されている。NODマウスの胸腺を摘出(Tx)することを基盤として、同マウスの自己の臓器に対する免疫反応を検索した。 NOD、A/JおよびBALB/cマウスのTxを生後3日(Txー3)、7日(Txー7)、および14日(Txー14)におこなった。動物は経時的に採血するとともに屠殺し、組織学的に検索した。蛍光抗体間接法(IFL)により、種々の組織に対する自己抗体の出現を検索した。またTxー3のNODマウスに同系正常マウスの脾細胞を注射し自己免疫病の予防の効果を検討した。抗L3T4抗体および抗Lytー2抗体と補体で処理した脾細胞についても検討した。 Txー3NODマウスにおいて、膵島のほかに甲状腺、胃、涙腺、眼、卵巣、精巣、前立腺等に炎症を認めた。臓器炎の発症に伴って血中にはそれらの対応臓器と特異的に反応する極めて高力価自己抗体がIFLにより検出できた。涙腺を除いて、これらの臓器炎および自己抗体は無処置NODマウスでは観察されない。Txー3マウスにおいても膵島炎は観察されたが、発症頻度および程度は無処置群に比較して低かった。Txー14のBALB/cおよびA/Jマウスにおいては自己免疫病は観察されなかったが、Txー14のNODマウスにおいては卵巣や前立腺に対する高力価の自己抗体が検出できた。NODマウスの胸腺は標準的なマウスのそれに比較してサプレッサ-Tリンパ球を産生する機能が劣っていることが推測される。Txー3NODマウスの膵島炎以外の臓器炎はTx後に同系無処置マウスの末梢のL3T4陽性のTリンパ球を注射することにより予防できた。
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